『目が見えない介護者』


私の担当した半身マヒの女性は56歳

その夫はサラリーマンをしていました。

 

5ヶ月間のリハビリを頑張りましたが、まだ一人では立ち上がることができず

手すりにつかまって立っているのが精一杯な状態でした。

 

病院側としては、自宅での介護は難しいと判断し、施設を検討した方がいいと伝えました。

なぜなら、その夫は目の病気で、ほとんど目が見えなくなっていたからでした。

 

病院に来るときも、部屋までたどり着くのに何度も迷ってしまう状態。

妻の介助量も多いため、はじめての介護でバランスを崩して転倒するリスクも高いのです。

 

しかし

夫は「それでも妻と一緒に暮らしたい、世話はオレがみるから!」と自宅退院を強く希望されました。

 

実際に、自宅へ退院して2人暮らしをするとなると、保険で使えるサービスは

日中1時間〜2時間程度のヘルパーや半日デイサービスと限られてきます。

両親に手伝いをお願いするとしても高齢です。

 

夫は日中サラリーマンのため、ずっとついているわけにはいきません。

もし、24時間ヘルパーをつけるとしたら、実費で月に数十万円かかるという見積もりがでました。

 

現実的には、日中は保険と実費でヘルパーとデイサービスをお願いし、

夜間と早朝は、目の見えない夫が介護しなければなりません。

 

そのため、私は退院までの2週間、できるだけ病院に来てもらい、介護の方法をお伝えすることにしました。

 

 まず、大変だったのが介護の方法を見せることができないということでした。

目が見えないということは、動きがわからず、言葉だけはまったく伝わりません。

また、半身マヒという病体で気をつけて介護しなければならないことはたくさんあります。

 

どうすれば、目の見えない介護初心者でも安全にでき、そして妻のリハビリにもなる介護

お伝えすればいいのか悩みました。

 

そこで、まず夫に対して、私が立ち上がる介護をすることで、介護される気持ちや感覚を体験してもらうことにしました。

 実際にお尻を半分イスから落として、半身マヒの状態がどれだけ大変だということも理解していただきました。

 

次に、妻の身体を夫がサポートし、その夫の手を私がサポートしながら、支えるポイント、力加減

重心の移動、スピードを真似をしてもらいました。

そして、私の手を離してもできるかを繰り返し確かめていきました。

 

その結果、退院までに寝返りから起き上がり、車いすやトイレの乗り移りなど

最低限必要な基本的な介護方法をお伝えすることができ、2人は自宅に退院することになりました。

 

 

まだまだ、一緒にサポートしたいのですが、残念ながら病院に入院できる期間は限られているのが現状です。

そして、本当の意味で患者様やそのご家族をサポートできる場所はとても少ないと思います。

 

このような経験を踏まえ、私は少しでも、患者様とはじめて介護をするご家族のお役に立ち

障がいに負けない、笑顔になれる介護、リハビリになる介護ができるように一緒にサポートして行きます。

 

 こちらをご覧ください ⇒ 『藤原式リハビリ介護』

 

リハビリ介護士 藤原